はじめまして、ルート・ブリュック
2019.10.13 19時〜
伊丹市立美術館で開催中(10月20日まで)の「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展(https://rutbryk.jp/)の関連トークショーを開催いたします。 ルート・ブリュック(1916-1999)は、フィンランドの名窯アラビアの専属アーティストとして約50年にわたって活躍し、初期の愛らしい陶板から膨大なピースを組み合わせた晩年の迫力あるモザイク壁画まで、幅広い作品を手がけました。重厚でエレガントな釉薬の輝きと、独自の自然観にもとづく繊細な図や形態は、今も多くの人びとを魅了しています。
ブリュックは北欧・フィンランドを代表するアーティストですが、今年4月に東京ステーションギャラリーで展覧会が開催されるまで、日本ではほとんど無名の存在でした。トークショーでは、本展開催を思い立った、「展覧会の生みの親」でもあるアート&デザインライターでプロデューサーの今村玲子さんをお招きします。 2016年に取材先のヘルシンキで、ブリュックの生誕100周年記念展に出会った時のこと、ブリュックの家族や友人との交流、ブリュックが夏を過ごしたラップランドのサマーハウスでの体験。さらには、フィンランド陶芸、デザインにおけるルート・ブリュック、現代の日本における展覧会開催の意義など、さまざまな観点からお話いただきます。
私の「はじめまして、ルート・ブリュック」
私がルート・ブリュックの作品に出会ったのは、2016年4月のことでした。
アート&デザインライターとして取材で訪れたフィンランド・エスポー近代美術館で、翌月から開催予定のブリュック生誕100周年展の準備室に案内されました。ブリュックのことは全く知りませんでした。けれど、荷ほどきされたばかりの、まばゆく輝く作品たちを目の当たりにした時、まるで世にも珍しい蝶の群れが部屋いっぱいに散り散りになり、羽を休めているように見え、「これは大変なものを見つけてしまったぞ」と、尋常ではない胸騒ぎを覚えました。美術館の人に教えてもらい、そのまま閉庁間近のヘルシンキ市庁舎に駆け込みました。2階へ通じる階段の踊り場に、横4.8メートル高さ3メートルの大作「陽のあたる街」がありました。私はおそるおそる階段を登ってゆきました。ヘルシンキの街並みを表したといわれる1975年制作の雄大な作品は、私の心と身体をゆっくりと、力強く抱きしめました。私はライターのくせに、「この感動を文章で伝えることなどとうていできない」と思いました。けれど同時に、「なんとかして日本の人に伝えなければいけない」と思いました。振り返れば、この時から、「ルート・ブリュックの作品を日本に持ってくる」という、まるで素人がエベレストに登るような無謀な計画が実現に向けて動きはじめたのです。ライター/「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展プロデューサー 今村玲子
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今村玲子
出版社を経て、2005年よりフリーランスとして国内外のデザインとアートを取材。2016年に取材先のフィンランドで出会った、ルート・ブリュックの作品に衝撃を受け、この知られざる北欧の宝を日本に紹介するため、ブルーシープと共に日本展「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」を企画制作(2020年末までに5つの美術館を巡回)。関連書籍、グッズ、プロモーションまですべてプロデュースに関わる。デザインとアートのあわいにある越境的な表現やものづくりに焦点を当て、現在もユニークな展覧会を企画中。
- 開催日
- 2019年10月13日(日)
- 時間
- 19時〜
- 会場
- 誠光社
- 定員
- 30名様
- ご参加費
- 1500円+1ドリンクオーダー
- ご予約方法
- 台風の影響で開催を見送らせていただきます。