いしいしんじ×藤井光×松本健二『物語ること』
2017.6.18 19時〜
翻訳家・藤井光さんと松本健二さんの朗読と、作家・いしいしんじさんのその場小説と、お三方のクロストークによる『物語ること』を、京都の誠光社で開催します。
藤井光さんが訳されたアンソニー・ドーア『すべての見えない光』(新潮社)と、松本健二さんが訳されたエドゥアルド・ハルフォン『ポーランドのボクサー』(白水社)が、第三回日本翻訳大賞を受賞されました。
アメリカ出身のドーアが、第二次世界大戦下のフランスを舞台にフランス人の少女とドイツ人の少年の二つの物語を並行して語った歴史小説『すべての見えない光』と、
ユダヤ系のグアテマラ出身のハルフォンが、少数派的状況を生きる自身のルーツを独特のオートフィクション的手法で探究した『ポーランドのボクサー』。
タイプの異なる両作品には、物語によって壁を乗り越えようとする共通のテーマがあるように思いました。
ラジオから聞こえる懐かしい声が心をつなぎ、ポーランドのボクサーによる言葉のスパーリングによって、アウシュビッツを生き延びる。
壁は人間の精神より大きくはなれない。空気からは可能性が流れ出す。
両作品を読んだ時、作家・いしいしんじさんが思い浮かびました。
いしいしんじさんが紡ぐ物語は、物理的時間や距離を軽々と超え、いしいさんがさまざまな「その場」で小説を書きながら読んでいく独自のパフォーマンス「その場小説」では、書くものと聴くものの垣根が溶けます。
今回のイベント『物語ること』では、まず、藤井光さんと松本健二さんに『すべての見えない光』と『ポーランドのボクサー』から朗読をして頂き、その響きが漂う中で、いしいしんじさんに「その場小説」を行って頂きます。どのような物語が紡がれるでしょうか。
その後、お三方によるクロストークと質疑応答を行います。
“優れた本は、文化や階級や人種、さらには時間の壁を超えていくことができます。優れた本は、僕たちをふわりと持ち上げ、自分という垣根を超えて、似たような人生を送る隣人であれ、地球の反対側で生きる人であれ、他者の人生に入り込ませてくれます。”
(アンソニー・ドーアの受賞メッセージより)
ぜひ、ご体験ください。
熊谷充紘(ignition gallery)
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いしいしんじ
1966年大阪生まれ。作家。京都大学文学部仏文学科卒。 2000年、初の長篇『ぶらんこ乗り』刊行。おもな小説に『トリツカレ男』(2001)、『麦ふみクーツェ』(2003、坪田譲治文学賞受賞)、『ポーの話』(2005)、『ある一日』(2012、織田作之助賞受賞)、『その場小説』(2012)、『悪声』(2015)など多数。
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藤井光
1980年大阪府生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了、日本学術振興会特別研究員を経て、現在は同志社大学文学部英文学科准教授。訳書にデニス・ジョンソン『煙の樹』、サルバドール・プラセンシア『紙の民』、ポール・ユーン『かつては岸』、マヌエル・ゴンザレス『ミニチュアの妻』(いずれも白水社)、ウェルズ・タワー『奪い尽くされ、焼き尽くされ』、ダニエル・アラルコン『ロスト・シティ・レディオ』、セス・フリード『大いなる不満』(いずれも新潮社)、ロレンス・ダレル『アヴィニョン五重奏』(河出書房新社)など。著書に『ターミナルから荒れ地へ 「アメリカ」なき時代のアメリカ文学』(中央公論新社)、編著書に『文芸翻訳入門 言葉を紡ぎ直す人たち、世界を紡ぎ直す言葉たち』(フィルムアート社)がある。趣味は妻と娘に連れられてアジア各地をさまようこと。
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松本健二
1968年大阪市十三(じゅうそう)市民病院生まれ。ラテンアメリカ文学研究者。旧大阪外国語大で修士号取得、現在は大阪大外国語学部准教授。ここ数年チリの詩人ニカノール・パラ、エンリケ・リン、ラウル・スリータ等を研究中。主要な訳書にロベルト・ボラーニョ『通話』、『野生の探偵たち』(柳原孝敦と共訳)、『売女の人殺し』、『ムッシュー・パン』、アレハンドロ・サンブラ『盆栽/木々の私生活』(白水社)、ホルヘ・エドワーズ『ペルソナ・ノン・グラータ:キューバを追われたチリ人作家』、セサル・バジェホ『全詩集』(現代企画室)、サマンタ・シュウェブリン『口のなかの小鳥たち』(東宣出版)等。目下チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの長編詩『すべての歌(Canto general)』を翻訳中。
- 開催日
- 2017年6月18日(日)
- 時間
- 19時〜
- 会場
- 誠光社
- 企画
- 企画:熊谷充紘(ignition gallery)
- 参加費
- 1900円+1ドリンクオーダー
- 定員
- 30名さま
- ご予約方法
- 満席につきご予約受付を終了しました。