白い展示台
足りない「もの」を作る
展示台の製作依頼を受けることがある。
先日はとある画廊から「建物の改装に合わせて展示台を新調したい」との依頼があった。以前使用していたものはクロス貼りだったが、今回は建物の内壁と同色でローラー目を残した白塗装を検討しているとのことだった。
「展示台」とは、文字通り作品や商品を展示するための台である。
作家や企画者から、展示の内容に合わせた具体的な指定がある場合には、光ったり動いたりするような独特なものでもすぐに作り始められるのだが、美術館などの施設で長期的に使用するための「一般的な展示台」の製作につまずくことがある。
ありふれた形だからこそ、一から作る場合には慎重に見極めなければならない部分があるのだ。
シンプルな用途の場合は既製品で十分なこともあるが、様々なものがあるなかで、展示空間との整合性がとれるものを選ぶのはなかなか難しい。
数cmの大きさの違いや質感で展示物の見え方が変わったり、壁や床とのわずかな色の差が悪目立ちすることもある。
基本的には上に乗っているものに目が行き、台自体は気にならないことが前提なのだが、展示物や会場、企画趣旨によっては寸法や質感などの必要とされる要素が変わるので、どこにどれだけ合わせて作るかが重要になってくる。
テーマに合わせた空間づくりのためには展示壁や展示台等の什器がそのつど必要になるのだが、短期間の展示のために大掛かりなものを作り会期が終われば廃棄、という流れが今の時代に合わないということもある。
何か一つ条件が変わる度、様々な台を使い分けるには管理や保管場所、予算の問題もあるだろう。大体の場合、空間の特徴や所蔵品の構成、施設のコンセプトなどを軸に、繰り返し長く使えて多様な展示物に対応出来る、その場所にとっての汎用性が高いものを作ることになる。
「一般的」という言葉に隠れている曖昧な部分をクリアにしていく作業を経てたどり着くのは、結局のところ個々の状況に合わせた独自の仕様なのだ。
一見同じように見えるものの中でどこか違う、そのわずかな差を見つけることこそが肝心なのである。