Scenery #1 2018 Summer 稲村ヶ崎にて
moving days -short cuts-
引越し1日目。晴れ。
この日はレイさんが逗子での1年の期限付きシェア暮らしを終えて、海近くの稲村ヶ崎の一軒家に引っ越して1日目という日。江ノ電に揺られ、私が引越し先の家に着いたのはすっかり夜中だった。久しぶりの再会。会話もそこそこに、窓際のソファを借りて早々に明かりを消した。
サイズの合わないカーテンの隙間から強い光。脇を走る電車の音で目が覚めた。
起きたらレイさんはちょっと浮かない顔をしていた。なぜかと問えば、シェア暮らしの時は 毎朝同居人が朝ごはんを作ってくれていて、だから朝はちょっと思い出して会いたくなるんだ、と。ならばと、昨夜買っておいたバナナを半分切って、小分けヨーグルトの蓋を取り、パンを置いて、アイスコーヒーに牛乳を入れて、「はい、どうぞ」とテーブルに出してみた。
ふっと笑ったレイさんは、「あの子はもっと色々作ってくれた」とか何とか言いながら、それでもちょっと嬉しそうにかじってくれていたような。そんな気がする。
朝。
レイさんと引越し写真のこと。
さかのぼれば、2016年。仕事関係で出会ったレイさんは何の気なしに、もうすぐ引越しますと連絡をくれて、何の気なしに、7年も住んだ家と離れ離れになるのはさぞ寂しかろうにと、撮りに行くねと伝えたのが”引越し写真”のはじまりだった。大阪から沖縄、再びの大阪を経て、逗子から稲村ヶ崎へ。レイさんが動くたびに、私はカメラを担いで追いかけてきた。普段こまめに連絡を取り合うわけでもなく、それでも、引越しのたびにするりと連絡が届いた。日程だけ決めて、そっとその時間を共にしながら。
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「moving days」と名付けて色々な人の引越しを撮り続けて数年。「動いていく日々」に漂う 空気や色、感情を写してみたかった。少しずつ集めてきた、それらの風景の中から、いくつかをカットしてお見せしたいと思う。