HALFBY(高橋孝博)インタビュー「アメリカももう限界が近づいてきている」
ギャラリートーク 作家さんに訊いてみた
ーchewiieを始めたきっかけは?
そもそもはセカンドロイヤル(*1)のサイト内で自分のものを売り始めたのがきっかけで、独立したサイトを立ち上げることに。もっと遡ると30歳になってはじめてクレジットカードを持ったころから、ebayなんかで海外通販をしまくるようになったのが始まりかな。ちょうど音楽の方の仕事(*2)も増えはじめて小銭も入りだした頃で、それから15年以上欠かさずに、毎月信じられない量のよくわからないモノが届くようになって。レコードはその倍の量はあるんだけど。
ー実際に買い付けに行くこともあります?
ハワイが好きで、旅行がてら買ってくることはあるけど、大半はオークションとかディーラーからかなあ。いまやよっぽど手広く買付けしないと、こういうピンポイントなセレクトでは現地買付は成立しないと思う。
ー収集の基準みたいなものってなんでしょうね。
レコードなんかと似てて、王道のものは別にいいかなと。例えば90年代に出された企業キャラクターのコレクター、ウォレン・ドッツ氏のコレクション・ブック”Advertising Character Collectibles Book”などがマニュアルとして強く浸透していて、日本のヴィンテージショップなんかはそれに則って商品構成しているところが多いんだけど、自分の感覚とはちょっと違う。そこを避けつつ、モンド・ミュージックとかネオアコのレア盤を探す感覚で買ってるのかな。ニューディスカバリーのものを自分で発見したり、王道のものでもすごく安くで掘り出したりするのが楽しい。
その玩具のバックグラウンドとか込みで面白がる感覚かな。例えばこの前見つけたカニのぬいぐるみを調べてみたらアメリカはジョージア州の冷凍シュリンプが有名な会社な販促キャラクターで、カニなんだけどソフトシェルクラブっていう脱皮直後の姿をまったく可愛らしいディフォルメせずにキャラクターにしてしまう。そういう感覚を面白がる感じ。
ー洗練されきっていない、ローカルで素朴な、でもキャッチーでもあるって、やっぱりネオアコとかインディーの感覚。やっぱり少年時代の原体験が大きいのかな?「E.T.」とかまさにそうでしょう?
まあそれもあるかな。でもそれだけじゃなく、「E.T.とか80年代の近未来SFのキャラクターとかって当時すごく売れてたから、ブートなんかも含めて横の広がりがあってそういう面白さもある。「スターウォーズ」なんかは現在進行系で当時の地続きのものとして今も更新され続けているかな。旧三部作志向のオッサンもいるけど、新しいファンも入ってきていて混沌としている。
あとはやっぱりアメリカのものに対する憧れがあって、そういうものが税関を通ってウチに届くっていうことに対して異常に高揚する(笑)
ー今回並んでいるものをいくつか紹介してもらえますか?この動物たちって作家モノだったりするの?
これは作家ではなく、アーサテニア・リコナンダというブランドで、実際は現地のおばちゃん達がマニュアルの技法に沿って造っているもので。勝手にウルグアイのリサ・ラーソンって読んでるんだけど(笑)日本で輸入しているところとか全然なくってこれは面白いなと。木彫りみたいに見えるけど実際は陶製で、文鎮みたいにずっしり重い。
ーパッケージもないわけでしょう?要するにマニュファクチャー化されていない、民芸品。
スーヴェニールとして売られているのか、どういう層がどういう目的で買っているのかもわからないんだけど、輸出されていてヨーロッパのディーラーなんかが持っていたりする。蒐めている人もいるんだろうね。
ーこいつは何?
「ハンバーガーヘルパー」っていうアメリカ庶民のお母さんたちの味方的な、ミンチ肉とトマトなんかとこの粉を一緒に混ぜて加熱するとラザニアみたいなのができるというインスタント食品の販促用キャラクターで、多分オーブンからバットを取り出すときに掴む用の鍋つかみとして使えるように、手が入れられるようになっている。なんか昔からあった、みたいな感じするよね。四本指っていうのも怖いし(笑)
ーこの茶色のオーバーオール着てるのは?
これはカリフォルニアに本社を置く世界最大のアーモンド加工会社の販促用キャラクター。カリフォルニアの日差しでこんがり焼けたみたいな設定なのかな。海外のディーラーから「家に10体あるんだけど買わない?」みたいな連絡が来て。ちょっとB-BOY感覚あるよね。ここの会社は時計とかキャップとかのグッズ展開もしていて、アメリカではポピュラーなのかもしれない。
ー背景を説明されるとグッと魅力的に見えてくる。
オンラインショップでもキャプションで詳しく説明しているから、それを読んで無名なものに新たな価値を見出してほしい。最近では2000年代のものがヴィンテージと呼ばれるように、80年代以降のものに価値を見いださないと、もう最近は60年代、70年代のものがなくなってきていて、アメリカの家庭にもなくなりつつあってディーラーも持っていなかったりする。アメリカももう限界に近づいているからこそ、有名なディズニーなんかのレア物とかじゃなくて、ニューディスカバリーをやっていかないと。こういうものを一番買っているのは日本人なんだけど、いつまでもディズニーとか有名キャラのレア物とかばっかり探すのって、要するにビーチボーイズばっかり聴いててネオアコとかには無関心みたいなこと。自分はもっとオルタナティブなものを探求したい。
- (*1)セカンドロイヤル HALFBYが所属する京都のレコードレーベル。
- (*2)音楽の方の仕事 HALFBY名義で音楽作品をリリースするだけでなく、アーティストへの楽曲提供、企業CMなども手掛けている
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