街から本屋が姿を消しつつある。そんな話をここ十数年いたるところで耳にしてきました。もう聞き飽きたという方も多いでしょう。メディア上ではノスタルジーと感傷にまみれた言葉が飛び交い、危機感を伴う記事もあちこちで目にします。話題にはなりながらも新刊書店は増えるどころか減る一方。百万冊規模のメガストアや、企業がバックアップする複合店がオープンしたというニュースは雑誌やSNSで目にしますが、雑誌や文庫を取り揃える個人経営の本屋が最近開店したという話は、寡聞にして知りません。
「街の書店」についてこれだけの言説が飛び交う中、なぜ新たに本屋が生まれないのでしょうか。その理由のひとつに、流通を一手に取り仕切る大手取次店との契約が困難なことや、その流通上の問題から新刊書の販売利益がごくわずかしかないという、構造矛盾があります。脱サラをした書店員さんが新刊書店を立ち上げるにはあまりにも高い障壁が目前にそびえ、それを乗り越えたとしても、本という商材だけではとても経営が成り立たないのが現実です。
システムに無理があるならば、改善し、あらたなルールを提案すればいい。本屋の話はもうやめにして、本屋をはじめてみよう。
誠光社は本屋の新しいあり方を提案すべく始めた、ささやかな実験でもあります。できるだけ出版社さんから直接本を仕入れ、双方の利幅を確保する。最小限の規模で、できるだけ店主が選書も店番も取引先とのやりとりも行う。売り上げを確保するため本以外のメディアを扱う際には、できるだけ本と親和性の高いものを選ぶ。土地に根付き、お客さまに影響され、店主自身も勉強しながら商品構成が変化し続ける。姿形はこれまでに親しまれてきた街の本屋でありながら、経営のあり方はこれまでと一線を画する。そうして出来た店が、これからの当たり前の本屋であることを願っています。
本屋は街の光です。誠光社の試みが広く認知され、同じスタイルの本屋が全国に百店舗できれば、薄暗くなりつつある街も少しは明るくなるはずです。今回の試みはできるだけオープンにし、本屋を志すみなさんと共有し、参照できるよう発信するつもりです。
この試みに賛同し、われわれと直接取引をしてくださる版元さまを募集しております。
誠光社
堀部 篤史