誠光社 SEIKOSHA

京都 河原町丸太町 書店

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明日からは『喫茶の一族 京都・六曜社三代記』刊行を記念し、挿絵を担当された北林研二さんの原画展を開催。北林さんは、そもそもシンガー・ソングライター、オクノ修のファンとしてライブに足繁く通われ、修さんと親交を深めるうち、現時点での最新アルバム『ホジキンソンさんの言うことには』にプロデューサーとして関わられたという経緯が。

画像は修さんが一時期雇われマスターとして立たれていた、通称「名前のない喫茶店」(本当に名前がない)をイメージしたカットですが、壁には林静一『赤色エレジー』の断片が描かれてています。のちに北林さんが、修さんと親しかった当時のことをよく知る方に聞いたところ、実際は「紅犯花」のページを切り抜きが飾ってあったそうです。窓を塞いで障子の桟のような枠をはめ込んで、そこに漫画、よりによって「紅犯花」のページをばらして貼っていたなんて、トンガッてますよね。1970年代初頭の話。ちょっと昔の京都を知ることもできる展示、どうぞお見逃しなく。
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2019年8月、"graffiti buff"つまり、塗りつぶされたグラフィティを撮影するため香港を訪れた著者が、逃亡犯条例反対を含む五大要求を訴えるデモ弾圧に巻き込まれ、武装警官に逮捕、拘束された際の記録。キツイ体験を綴った生々しいテキストを、現地のグラフィティ写真とともに掲載した匿名による自費出版物。

ストリートでの催涙弾の発砲、武装警官による暴力的で手当たりしだいの逮捕、不条理で悪夢的な拘束と取り調べ。SNSやネットニュースで目にした海の向こうの騒乱が、解像度を増し、リアルな体験として迫ってくるのは個人目線のZINEならではの力。なによりこのZINEの存在そのものが、流れ過ぎるタイムラインや、すぐに更新されるネットニュースのように消されることに抵抗するグラフィティのよう。店頭、オンラインショップにて販売中。
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カーソン・マッカラーズの作品は長らく入手困難だった。1992年白水Uブックスから刊行された『悲しき酒場の唄』が品切れになってから2016年の『結婚式のメンバー』新訳刊行までおよそ20年近い間、書店の店頭で偶然彼女の作品に出会う機会は少なかったはずだ。自分と同世代の読書家にとってそれは十代後半から三十代の終わりまで、最も意欲的に読書に励んだ時期と重なるのではないか。

かくいう僕も比較的入手しやすい『悲しき酒場の唄』は古書店で見つけて読んだけど、デビュー作にして代表作『心は孤独な狩人』にはいままで出会えずじまいだった。マッカラーズの分身でもある少女ミックが唖のジョン・シンガーと通じ、愛する音楽を反芻する、心の「内側の部屋」。加齢と過剰な情報、忙殺される日々によりそれを失いつつある今読んでも圧倒されるに足る作品だったけど、やはり「内側の部屋」を大切にする若い読者にこそ読んでもらいたい。マルクス主義からブラック・ライヴズ・マターまで今尚有効な問題意識が詰まった重厚な傑作です。『心は孤独な狩人』(村上春樹訳/新潮社)店頭にて販売中。
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